3日目
高知県須崎の「国民宿舎土佐」から愛媛県西予市の「松屋旅館」まで
さてこの3日目が強行なツーリングとなった。

●小錦のような
この朝、国民宿舎土佐で5時に起床した。朝風呂に6時頃入ると昨晩夕食時に会話をした埼玉から来た男性が入ってきた。
「今日は何時ごろお出かけですか」と聞くと「7時ごろ出かけようと思っています」とのこと。

私は昨晩の計画では200Kほど走りゆっくりと愛媛県に入る予定でいた。昨晩塗ったサロンパスが効いたのか指や手首の痛さも治っていた。やはりサロンパスを持ってきて正解だった。
昨晩は知らぬ間に寝てしまったので緊急時に必要な携帯電話の充電をしていなかったのに気づき朝慌ててコンセントに差込んだ。

8時30分ごろ精算済ませ手荷物をバイクの側まで持っていった。すると支配人らしき人が出てきて「これハーレーですね」そこからバイクの話を支配人が語りだした。大変詳しいので「以前ハーレーに乗っていたのですか」と聞くとそうではなく250ccクラスのバイクに乗っていたというのである。支配人は本当にバイクが好きらしくハーレーに興味があるのか自らハーレーのグリップをもって芝生の上からスタート地点まで移動させてくれた「これはヤッパリ重たいですね」と息を切らしていった。車輪は付いているものの300kともなると相撲界の小錦の体重が250kあるわけだから小錦を自転車に乗せて転がすようなものだ。

●礼所巡り

さていよいよ3日目の出発だ。スタート時刻は9時ジャストであった。
山の頂上にある国民宿舎を後にして走り出すと巡礼さんが数人歩いていた。四国はどこに行っても巡礼さんがいるのには驚かされた。10分ほど下ったところに巡礼さんが一人歩いている。私のバイクの音を聞き立ち止まって振り向いた。よく顔を見ると昨夜夕食を共にし朝風呂で再び顔を合わせた埼玉の男性だった。
私はバイクを停め「何時ごろ宿舎を出られたのですか」と聞くとニヤリと笑いながら「7時だから2時間は歩いてます」聞いた瞬間失礼だが笑い出してしまった。彼も笑っていた。私は10分だった。
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バイクは段々南下し海沿いや山の中を交互に走り抜けた。しばらく走ると山に入る手前あたりから空がドンヨリと曇りだしてきた。
ある田舎町に差し掛かった時、雨がパラパラ降ってきた。しばらくそのまま走り続けていたが雨足が段々ひどくなり皮ジャンやズボンが濡れだしてきた。取り合えずガソリンスタンドに飛び込み雨合羽を着る軒下を借りる事になった。ガソリンはまだ満タンに近かったので入れなかったが気持ちよく応じてくれた。

●雨の中の走行
さて合羽を皮ジャンの上からに着るのは大変だ。合羽のズボンには吊りバンドが付いている。皮ジャンの下には寒さをしのぐ為にスポーツウエアーを着込んでいる。体はコロコロで動きが取りにくい、合羽を着るのはそう簡単ではない。

スタンドを離れしばらく走るとジャジャブリ状態になってきた。視界が悪くなるので左手でヘルメットの面を拭き拭きの走行だ。ヘルメットを雨がたたきつける音がする。ふと気が付くとカメラを積み込んでいるキャリーが気になりだした。自分の体は濡れないが積み込んでいる荷物に水が回ると大変だ。ふと見るとホンダのバイク屋があったのでそこに飛び込み全天用の手袋と荷物にかぶせるビニールカバーがないか聞いてみた。無愛想な返事で「ないね」で終わりだ。
仕方がないのでサイドケースからバイクカバーを引張り出して小さく折りたたみ、ネットで包みロープで縛り付けた。見るも無残な格好になっていく。

ドシャ降りの山の中をスリップに注意しながら走行を続けるがカーブに差し掛かるとスピードはドンと落ち込み30〜40k程度まで減速しなければスリップが怖くて曲がりきれない。
ドシャ降りの中を走りながら今まで体験した事のない心境に陥った。まるでトンネルの中に入ったような自分との戦い静けさ。これが又何ともいえない心地よさを感じた。この心境は第三者には表現しづらい。そんな中を坦々としたペースで巡礼者は歩いている。そんな巡礼者の事を考えると私はバイクだ。こんな事ぐらいでと勇気付けられた。そんな雨の走行が40分は続いたのだろうか。

途中身体が冷えたのか”おしっこ”がしたくなり山脇に停車する。場所を探して立ちションだ。これまた大変、吊りバンドを外すのに上の合羽のチャックを外しあらゆるボタンを外し準備をしなければならない。その時女性は何時もこんな事をしているのだろうかなんて考えた。済ませた後ふと横を見るとお地蔵さんが置いてあった。これは申し訳ないことをしたと手を合わせてその場を立ち去った。

その場を離れると日が照ってきた。その時ふとこんな事を考えた。ツーリングは人生とよく似ていると。良い後は悪く、悪い後は良い、とよく言うが正にそんな感じがした。

今までの雨が嘘のように晴れてきた。再び海沿いに出た室戸から20kほど離れたあたりで「鯨に会える町」とか「くじらウォッチング」とか書いた看板が目に付いてきた。その場所は佐喜浜港あたりである。

今回、山中での雨の走行は私にとっては初めての体験だが良い経験をしたと思っている。

国民宿舎土佐から山を降る道中 1

国民宿舎土佐から山を降る道中 2


一度目:ガソリンスタンドに飛び込み合羽を着る。


二度目バイクカバーをぐるぐる巻きにして雨が入り込まないように助手席のキャリーを保護する。










徳島市内から高知市内まで55号線だったのが高知から松山市内まで56号線になっていた。
  
国民宿舎土佐から山を降る道中